業界主導型定期借地権
 
 不動産業界には、定期借地権を運用する三つの動きがあるといわれている。
 第一にハウスメーカーは、一戸建住宅の建築請負の受注を増やす手段として、特に一般定期借地権の運用に力をいれている。いわゆる“定借ハウス”といわれるもので、所有権付の分譲住宅よりいかに経済的な負担が軽くなるのかという点を消費者にアピールすることによって、販売を促進している。
 第二にディベロパーは、公有地等に一括して一般定期借地権設定し、自らが借地人となって借地権を譲渡する形で住宅を分譲する方式に積極的に取り組んでいる。この方式は、現在のところ一戸建を中心にその活用が展開されているが、分譲マンションにも運用の機運が広がりつつある。
 一般定期借地権の活用は、三和銀行やあさひ銀行等大手都市銀行が“定借ローン”と名打って、定期借地権付の分譲住宅に対し融資を行うようになったこと、また、住宅金融公庫が定期借地権付の住宅に対しても、普通借地権付の住宅同様、建物のみを担保とすることによって融資を行うようになったことによって一層拍車がかかったのである。しかし、この定借ローンは提携ローンに限って取り扱われているものであり、一般市民が自主的にローンの申し込みをして利用できるものではないということである。事実上、その利用の主導権は大手ディベロパーに限定されてしまうことになる。
 第三に仲介業者は、事業用借地権の仲介を積極的に行うことによって、仲介手数料収入の増大をはかっている。宅地建物取引業法には、仲介手数料は、賃貸の媒介の場合、賃料の1カ月分が仲介手数料となるのが原則で、例外的に権利金の授受があった場合は、権利の移転の対価があったものとみなされ、その金額に応じて仲介手数料が得られることと定められている。事業用借地権の場合は、権利金方式よりも保証金方式が主流になりつつあり、保証金の場合は権利の対価とみなされないために、1カ月の賃料が仲介手数料となり、非常に安価である。このため、宅建物業界からは、宅地建物取引業法を改正し、事業用借地権の仲介を行った場合は、保証金方式の場合も、保証金を基準として仲介手数料を得ることができるようにしてほしいとの要望があがっている。裏返して言えば、宅建業法の改正が事業用借地権の活性化につながるともいえるのである。
 定期借地権創設の背景にも、不動産業界からの強い働きかけがあったが、その活用についても、地主や一般市民ではなく不動産業界主導型で進められているのである。特に、バブル経済崩壊後は、実需に応じた住宅の建設や、空地の有効利用は、定期借地権制度に依存せざるを得ない状況となっている。
   《M不動産のK県における定借運用実用例》
 
 A(地主) B(ディベ M不動産) C(エンドユーザー)
 Aが借地権設定者Bが借地権者となって22条の設定契約を行う
 Aが登記義務者、Bが登記権利者となって22条の賃借権設定仮登記を行う。契約上は、Bはエンドユーザーに限って賃借権を譲渡できる旨の特約を付ける。譲渡・転貸特約は登記しない。
 存続期間は51年。(建物建築期間を1年とみる)
 この時点でBはAに保証金を支払う。
 Bの慣例会社が建物を建築する。
 Cが定借ハウスを購入する。
  建物→C名義保存登記、
      抵当権設定(1番住宅金融公庫 2番都市銀行)
  土地→B名義の仮登記賃借権をCに移転
     Cは賃借権の仮登記を本登記する
 BはAから保証金の返還を受け、CがあらたにAに保証金を支払う 。
モデルケース  1区画 200    木造二階建115 
     価格3680万円(土地保証金1000万円                   建物   2680万円)          地代 月額30000円  3年毎の見直し
  保証金は購入金額全体の20%から30%の間で設定する。
8,定期借地権設定契約書作成
 
の留意点 (賃借権設定を前提とする)
 
 契約の成立  普通借地権
        賃借人 土地を使用収益する
        賃貸人 賃料を得る
          このような当事者の契約意思によって成立          する 書面等の様式は必要でない
          期間は30年以上
          ( 定めない場合は30年とみなされる )         22条
        普通借地権に以下の三つの特約をセットする
          a更新はない
          b建物の再築による期間延長はない
          c借地人の建物買取請求権はない
             (特約は書面で)
          期間は50年以上
        24条
       公正証書の作成が効力要件である法定の借地権        (更新、建物再築による期間延長、建物買取請求       権の規定が法律によって排除されている)
         期間は10年ないし20年  事業目的に限定
 ★ 22条、24条は契約成立の要件が欠けた場合は、普通借 地権とみなされる危険性があることに注意する必要がある
 ★22条は、法文上は特約のみが書面でされる必要があると定 められているが、事実上は契約全体を書面で行うことになる
 ★24条は、事業目的・期間・借地権の及ぶ土地の範囲等につ いての公証人の判断が、契約の内容について重大な影響を与え ることになる
 ★22条、24条は契約の効果は酷似しているが、成立要件   にはかなりの差異があることに注意するべきである
 
以下22条についても、契約書全体を書面で作成することを前提に記載事項についての解説を行う
 
(1)必要的記載事項   22条 
            建物所有目的であることの明示
            前記の三つの特約
            存続期間(50年以上)
            賃料に関する定め
            賃貸借する土地の表示
             24条
            24条事業用借地権であることの明示
            存続期間(10年ないし20年)
            賃料に関する定め
            賃貸借する土地の表示
 
(2)特約条項として定めることによって効果が生じる条項
    (22条・24条共通)
  民法619条(黙示の更新の規定)の適用排除
 用途制限についての規定
 賃料支払い期限
 賃料自動改定特約
 保証金に関する定め
 借地上建物賃貸借の制限
 無催告解除特約
 借地人からの解約権の留保
 書面報告義務
 明け渡しにいたるまでの遅延損害金についての定め
 費用償還請求権放棄特約
 登記協力義務についての定め
 費用負担についての定め
 管轄裁判所についての定め
 連帯保証人
 駐車場についての定め
 仲介手数料の負担についての定め     等
 借地借家法では、強行規定に反する借地人に不利な特約は無効とされているが、以下のような地主に有利な特約は、判例上有効とされている。
 1 無断増改築禁止特約  借地上の建物を増改築する際には
              地主の承諾が必要とする特約
 2 用途制限特約     借地人は契約・目的物の性質によ              って定められた用法にしたがわね              ばならないとする特約
 3 地代の支払い時期に  地代は原則的に毎月後払いである   関する特約      が特約により翌月分を前月25日              に支払うなど先払いすることを定              めることは可能である
 4 無催告解除特約    契約を解除する場合催告のうえ行              うのが原則だが、地代の滞納がた              び重なった場合や著しい用途違反              などの背信行為があった場合催告              をせずに解除できるとする特約
 5 明渡しまでの損害金  契約を解除、あるいは終了したも    についての特約    にもかかわらず、借地人が土地の              明渡しをしない場合、損害金を契              約地代の二倍程度に定める特約
              (何倍まで有効とはただちにいえな              いが、あまりに苛酷な条項は無効) 6 賃料自動改定特約   賃料を2〜3年毎にGNP成長率              など合理的と考えられる指標に従              って自動的に改定するとする特約
 7 費用償還請求権    必要費・有益費等の費用償還請求   を放棄する特約    権を放棄する特約
 
 なお、以上のような特約違反があった場合にただちに契約解除ができるかという点については、判例は非常に慎重な態度をとっており、実際にはおのおののケースについて、信頼関係違反があった否かによって判断している。
 1の無断増改築禁止特約あるいは2の用途制限特約があり、地主が事前に増改築や用途の変更を承諾しない場合は、借地非訟手続により裁判所の許可を得て増改築や用途変更をすることができる。この申立てはあくまで建物増改築や用途の変更に着手するまでになされることが原則であり、既になされてしまった増改築や用途の変更については遡って適法とするための許可はおりないので注意が必要である。
 4の無催告解除の特約については、催告なしで契約解除を認めるケースは実際には信頼関係違反があった場合に限定されており、この特約が契約に付されているような場合でも、契約解除をするにあたり、催告を行うほうがよい。
《無断増改築禁止特約》
 借地上の建物の所有権は借地人にあるので、建物の増改築をすることを禁止する特約の効力には問題がある。借地権は、借地上に建物所有することを目的とする権利なので、その所有する建物を借地人がどう処分しようと本来借地人の自由であるはずである。しかし、借地借家法13条では、普通借地権の場合、借地契約終了時に、借地人が借地上建物を時価で地主に買い取ることを請求する権利が定められている。建物を増改築すると、建物の時価が地主が予想していた価格より高くなる可能性がある。また、借地上の建物はその種類・構造・規模等が借地の用法に密接に関係する事柄であるし、正当事由にあたって考慮され、存続期間に影響を与えることになる。以上のような理由により、借地借家法にはいわゆる“無断増改築禁止特約”(借地人が建物の増改築をするときには地主の承諾が必要であるとする特約)の有効性を前提とする規定(借地非訟手続)がある。そしてこの規定は定期借地権にも適用される。それ故に、無断増改築禁止特約は、契約書に盛り込むことができるのである。
 とくに、事業用借地権の場合は、建物の建て替えによって事業目的が居住目的に変更させられることも考えらる。無断で建物を建て替えることによって居住目的になってしまえば、用途違反で解除することができるはずであるが、地主が事前のチェックできないと、その建て替えが地主の黙認を得ていたのかどうか、はっきりしなくなる可能性がある。あらかじめ増改築を地主の承諾にかからしめることによって、その増改築をチェックしようとするのである。
(3)法律上の当然の規定を明示し当事者の注意を
   喚起するための規定   (22条・24条共通)
  無断譲渡転貸禁止特約
 善良なる管理者の注意をもって土地を保存する義務
 用方遵守義務
 行政処分による契約の失効
 建物収去土地明渡義務(民法上の原状回復義務の確認)
 
(4)法的に意味はないが当事者のモラルを定めるための規定
   (22条・24条共通)
  土地明渡しの際の残留物の所有権放棄の規定
 土地明渡しの際立退料等を請求しない旨の定め
 モデル契約書式例第17条(24条)のような協議事項
 
(5)契約書に記載しても法的には無効の規定
    強行法規違反・公序良俗違反の規定
      〜事業用借地権の場合は、公証役場において
       チェックされる
   《 例えば、借地上建物賃貸借を禁止する規定 》
 借地上の建物の所有権は借地人にあるので、建物の所有権を制限するような特約は原則的に無効です。特に、事業用建物の定期借地権の場合は、限られた期間に借地上建物の利用・収益よって最大限の利潤を追及することを目的とするものであるから、建物賃貸による利用・収益を禁ずることは、居住用の借地権以上にその合理性が疑われることになる。借地上建物の賃貸を禁止する特約もそのような強行法規に抵触する特約の一つと考えらる。
 
(6)確実な土地返還を促すために
 定期借地権設定者である地主の最大の懸案は、確実な土地返還が受けられるかどうかという点である。設定契約には、確実な土地返還を促すために最大限り工夫をするべきである。
《建物譲渡特約について》
1,建物譲渡特約のメリット
 定期借地権は、借地契約終了によって確定的に借地権が消滅し、建物を取り壊し、更地にして所有者に返すことに本来的な意味があるといえる。借地人による建物買取請求権はない。しかし、借地期間が終了時点で、建物が十分に使えるものであるとするなら、地主は借地上の建物をわざわざ取り壊してもらわなくても、自分が使用したいと考えるようなこともあるであろう。建物を地主に無償譲渡する、あるいはある一定の金額で地主が買い取ることによって、借地人は建物取り壊し費用を調達する必要もなくなり、地主も契約終了後も譲り受けた建物を事業に使用することによって収益をあげることが出来ることになる。経済的な意味で当事者双方にとってこのような特約をつけることはメリットがある。
2,建物譲渡特約の危険性
 これら特約を契約当初にした場合の効力については、現在のところ、有効説もあるが、否定説のほうが有力である。有効説の根拠は、借地人からの建物買い取り請求権は法文の上で排除されているが、地主の方から建物の無償譲渡を請求する権利、あるいは建物の売渡を請求する権利までも制限するものではないというものである。
 否定説の根拠は、これらの特約をつけると、定期借地権の法の趣旨である更地返還が否定されるので、定期借地権設定契約自体が無効となるというところにあるのである。したがって否定説にしたがうと、契約当初にこのような特約を付けると、普通借地権の設契約とみなされる危険性があることになる。
3,借地契約終了間際の建物譲渡特約は有効
 建物の無償譲渡や売渡請求権を定める特約は、契約の当初ではなく、契約の終了時期に定めれば安全である。建物を取り壊した方がいいのか、あるいは無償で譲渡してもらった方がいいのか、借地人と協議の上、できるだけ契約終了間際に特約を慎重に判断したほうがよい。特に建物に抵当権がついている場合などにトラブルが起こる危険性がある。
《建物賃借人の扱い》
1,建物賃貸借が普通借家契約の場合の問題点
 借地人が借地上建物について普通借家契約を締結した場合、借地期間満了時には借家人は、建物賃貸借関係の終了の有無を問わずその存続の基盤を失い、建物を明け渡さなくてはならない。借地借家法には“借地上の建物賃借人の保護の制度”(35条)の規定が新設された。これは、借地上の建物賃借人で、借地の期間満了時による終了を知らなかったものについて明け渡しの猶予を認める制度である。借地上の建物賃借人は、裁判所の許可を得て定期借地上の建物の賃貸借であることを知った日より1年を越えない範囲で明け渡しを猶予されることになっている。しかし、このような保護制度があるにもかかわらず、定期借地上の建物と知らずに賃借した建物賃借人が、定期借地上の建物であることを知った日から1年を過ぎても、建物の明け渡しを拒み、明け渡しがスムーズに行かない場合は、明け渡し訴訟を起こさざるを得ない場合もあるだろう。
2,取り壊し予定の建物賃貸借
 物賃貸借を取壊予定の建物賃貸借によると限定することは可能である。借地借家法39条に新しく、旧借家法にはない、取り壊し予定の建物賃貸借という規定が定められた。これは、法令または契約により取り壊しが予定されている建物については、建物が取り壊されるべきときに確定的に賃貸借が終了する旨を特約として定める、期限付の建物賃貸借の制度である。典型的には定期借地権上の建物の賃貸借の場合が想定されている。したがって、特約として借地人が借地上の建物を賃貸しようとするとき、取壊し予定の建物賃貸借によるべきであることを定めることは差し支えない。
 借地契約満了後のよりスムーズな明け渡しを実行するためにも、特約として借地人が建物を賃貸する場合は地主に通知をすること、及び建物賃貸借契約は取壊し予定の建物賃貸借契約によること、そして少なくとも借地期間満了1年には借地人から建物賃借人に対して建物が取り壊される予定であることを通知させることを定めるべきではないだろうか。 念のため、借地期間満了前に地主から借家人に対して、借地期間満了の通知を内容証明郵便で行うのも一つの方法であるといえる。
《保証金の返還時期について》
 建物収去・完全な土地明渡そして賃借権登記の抹消・建物登記の滅失、明渡の際に必要な全ての事項を履行してから保証金を返還する旨を契約書に定めることによってよりスムーズな土地返還が期待できる。これは、民法上の現状回復義務を確認した規定に規定に過ぎないが、借地人の注意を促す規定としては意義があるといえよう。
《立退料について》
 正当事由制度の適用がない定期借地権には立退料は発生しないはずである。正当事由制度とは、借地契約の更新の際、地主が借地人に比べその土地の自己使用の必要性が高い場合にしか更新拒絶を認めないという制度である。借地借家法施行前には、借地の明け渡しの際には多くの場合、正当事由を補完するためにいわゆる“立退料”の支払いがなされていた。地価の高騰に伴う借地権価格の高騰、そしてそれに伴う立退料の高額化が社会的にも問題になったことは記憶に新しい。それゆえに借地契約が次第に使いにくいものとなり、新たな借地の供給は激減し、旧来の借地制度は土地の有効利用を阻んできたといわれていた。定期借地権制度は、一定期間が過ぎれば必ず地主に土地が返ってくるという借地契約の更新がない制度である。契約の更新を拒絶するために地主に正当事由が必要であるとする正当事由制度は全く適用の余地がない。したがって、明け渡しについての条項には、立退料を請求しない旨を、確認のため入れておく意義があるであろう。
《存続期間満了時の建物抵当権》
1建物滅失登記について 
 事業用借地期間が満了しますと、建物を取壊して土地を地主に明け渡さなくてはならない。建物については、滅失登記を申請することになる。
 滅失登記の場合は、特に抵当権者の承諾書は必要ではない。事実上、建物がなくなったことによって滅失登記はできる。もっとも、実務上は、抵当権がついているような建物の滅失登記を申請する際には、抵当権者に滅失登記を行うことを通知し、その承諾の有無を申請書に添付する調査書に記入することになっている。滅失登記の申請がいわゆる“抵当権とばし”にあたらないか判断するためである。契約終了時に、借地人が建物取壊しをした際には、必ず建物の滅失登記をする。
 滅失登記の申請人は建物所有者である借地人であるが、借地人が積極的に登記を行わないときは、地主は物件所在地の法務局に対して職権で滅失登記を行うことを要請することができる。建物滅失登記は、不動産登記法上にいう“表示登記”にあたるが、表示登記は登記官が職権でおこなうことができる旨が定められているので、建物所有者以外の利害関係人(地主)も登記官に対し職権発動を促すことができると考えられる。契約終了時、借地人において建物の滅失登記をすることを契約書に定めておくのがベストである。
  建物が取り壊されたのにもかかわらず、滅失登記をせず、建物の登記が残っているような場合は、地主は、土地の担保価値が下がったり、土地売買ができなくなるなどの損害を被ることにもなりかねない。
2、契約期間満了時の事業用借地権の担保価値について
 抵当権者は、借地期間満了時によって、借地上の建物が取壊されますと、担保物件がなくなるので、借地人に対してまだ債権が残っておりますと不利益を被る。しかし、抵当権者は、担保とする建物がいずれは期間満了によって消滅する敷地利用権の上に建つものであること、期間満了によって取り壊しが予定されている建物であることを知って、担保にとっているので債権が残っていることを理由に、借地人に対して建物取壊しを阻止することはできない。
3,建物を取壊さないで地主が譲り受ける場合
 建物取り壊しに代えて地主が建物を買い取ることもできる。しかし、抵当権付の建物を譲り受けるのは危険である。建物を譲り受ける場合は、抵当権を抹消必要がある。抵当権の登記をそのまま残した状態で譲り受けると、事業用借地権の存続期間の満了後に、抵当権が実行された場合、建物の競落人に法定地上権が発生する可能性がある。20年後に必ず返ってくるはずだった地主の土地に予期せぬ権利関係が付着してしまう危険性があるのである。借地期間途中で建物の所有権を取得して契約を終了させたい場合も要注意である。
 事業用借地権の存続期間内に建物の抵当権が実行されると、たとえ借地上の建物が土地所有者の所有に帰してもその建物が抵当権の目的となっている限り、事業用借地権は混同によっては消滅しないので、建物の競落人が建物所有権を取得することになる。したがって、いったん取得した地主の所有権は消滅してしまうことになる。
5、建物を取り壊さないで同じ借地人と新たに事業用借地権設定契約をする場合 
 抵当債務が残存しているような場合、抵当権者としては、建物の付従的権利として担保の効力が及んでいた借地権が期間満了により消滅したのだから、以前の抵当権は抹消し、あらたに建物に対し抵当権を設定するべきであろう。地主は以前の抵当権を抹消するように借地人を促し、あらたに抵当権を設定する際には、承諾を徴求される機会に、抵当権者にあらたに設定した事業用借地権設定契約の内容をよく説明する必要がある。事業用借地権の登記もいったん抹消し、あらたに設定するべきであろう。