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2月2日、司法制度改革審議会、隣接法律専門職種に関する審議終了、司法書士制度はどこへ行く!?
 
 2月3日(土)の主要新聞各紙に「司法書士に訴訟代理権付与」という大きな見出しが掲載され、我々の司法制度改革に対する取り組みも成就したのか、と思われた方も多かったと思います。しかし、そんなに簡単に、手放しで喜んでいいのでしょうか。
 
 2月2日、司法制度改革審議会においては、弁護士隣接法律専門職種に関する事実上の最終審議が行われました。3日の新聞報道は、この審議の結果を受けて報道されたものです。2月2日の司法審の議事概要などはまだ公表されていませんので、審議の結果、どのようなことが結論付けられたのか、詳しい内容は明らかではありませんが、毎日新聞によると「簡裁の民事訴訟のうち、訴訟の対象額が少ないものに限って」という制限がついており、朝日新聞・毎日新聞によると「試験や研修など信頼性を確保する手段をとる」という能力担保制度が必要であることとなっています。また、日経新聞によると、日弁連は、一貫して司法書士に代理権を認めることに反対の姿勢を崩していません。その理由として@法廷実務の訓練を受けていないことA司法書士は法務省の指導下にあり、独立性が担保されていないこと、の二つがあげられています。
 
 要するに、付与される代理権の内容は「簡裁・民事・少額」という限られたものであり、それも全員に付与されるのではなく、「試験あるいは研修」という条件が課されています。内容を見ると、司法審の結論は、我々が当初期待していた内容とはかなり異なっていることが明らかになっています。もちろん、期待されていた家事事件・執行事件などの非訟事件も除外されているようです。
 
2月2日の審議に先立って、1月23日の第44回の審議会においても、弁護士隣接法律専門職種に関する議論がなされています。議事概要から委員と久保井日弁連会長とのヤリトリが明らかになっています。以下、関連部分の質疑です。
 
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質問 隣接法律専門職種との関係で、過渡的な措置として、一定の権限を認めるということだが、過渡的な時期を経過した後はどうなるのか?
 
回答 一旦与えた者から権限を奪うことは現実にはできないが、その時期以後に資格を取得した者には権限を認めないということも考えられないわけではなく、まだ、確定的な意見を持っているわけではない。弁護士が増加した後は、弁護士が本来の姿に従って、それらの事務を取り扱っていくべきことである。
 
質問 司法書士に対し、訴訟代理権を認めずに、補佐人の権限のみを認める理由はどこにあるのか。高齢者や病人は、一緒に出廷することができないため、利用できないという問題があるのではないか?
 
回答 事実上補佐している現状から、補佐人としての権限を認め、当事者席について正式に訴訟行為ができるようにすれば必要十分であると考えている。地方では、90万円以下の事件もそれ相当の訴訟事件であり、本来的には弁護士の増加で対応するべき。高齢者・病人への対応については、各弁護士会において充実強化の方向で検討している。
 
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 要するに弁護士会は、隣接法律専門職種は、司法試験合格者3000人体制によって市民のリーガルサービスに対するニーズを満たすまでにには時間がかかるので、過渡的に隣接法律専門職種を利用するのはやむおえないとしても、本来は、弁護士自身が市民の名ニーズに応えるべきであるという立場をとっているといえます。
 
 また、日弁連が、司法試験合格者3000人体制とそれを支えるロースクール制度の導入を容認し、経済同友会が資格の統合論を打ち出したことによって、司法書士がほぼ独占していた登記業務へ、弁護士・行政書士等がなだれを打って参入してくることが予想されます。
 
 当初、職域拡大の期待と相まって、司法制度改革は、制度的な最大課題であったはずですが、その結果は、どうだったのでしょうか。我々の司法制度改革に対する取り組みは、本当に正しかったのか、検証を行う時が来ているように思えます。そして、本来の中心的業務の登記は一体どうなるのか、甲号オンライン申請自体に突入しようとしている今、司法書士の社会的存在意義を政策的にアピールしなければならないと思います。

前川滝川司法書士事務所