ピアノ

定期借地権契約書



アイコン
アイコン
アイコン
       モデル契約書式例  
  一般定期借地権設定契約書
 
 借地権設定者       (以下甲という)と借地権者      (以下乙という)は、甲の所有する土地(以下本件土地という)について、次のとおり借地借家法(以下法という)第22条に定める一般定期借地権の設定に関する契約を締結する。
 .標記
 
 土   所    在     地 番   地 目   地   積
 地
 の
 表
 示
    合計  筆 登記簿上    、実測    、契約地積    
 土地上に  種類
 建築され  構造
 る建物   規模
       用途
 
  賃貸借   平成   年   月  日(西暦  年 月 日)より
  期間    平成   年   月  日(西暦  年 月 日)までの
              年間  (ただし50年以上)
       賃 料   月額     円 賃  金融機関
           (公租公課は別)  料
  賃料等  権利金         円 振  口座番号
                    込
       保証金         円 先  口座名義人
 
  連帯   住 所
  保証人  氏 名              年齢       才
       職 業         乙との関係
 
 .契約条項
(規定の不適用)
第1条 本件借地権は賃借権とする。
  2、本件借地権については、契約の更新(更新請求及び土地の使用継続によるものを含む)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、また借地権者は、建物の買取を請求することは出来ないものとする。
  3、本件借地権にいては、法第3条ないし第8条、第13条及び第18条並びに民法第619条の適用はないものとする。
 
(建物の用途・種類等)
第2条 本件土地の上に乙が所有する建物の種類、構造、規模および用途は標記のとおりのものとする。
  2、乙は借地権の存続期間中、前項の建物を良好な状態で保全するようにつとめなければならない。
 
 (借地期間)
第3条 借地期間は標記の期間とする。
 
  (賃料)
第4条 月額賃料は、標記金額とし、乙は甲に対し毎月25日までにその翌月分を甲の指定する標記金融機関口座に振り込むものとする。ただし、振り込みにかかる費用は乙の負担とする。
  2、標記賃料は、2年毎に改定するものとする。賃料は、改定年 月に経済企画庁が発表するGNPの成長率に応じて改定するものとする。
  3、公租公課は乙の負担とし、甲は毎年5月に年税額を乙に通知するものとする。乙は年税額を月割計算し、賃料と共に毎月25日までに振込むものとする。
  4、乙が賃料を前記支払期までに支払わないときは、年20パーセントの遅延損害金を日割計算にて賃料に付して支払うものとする。
 
(権利金)
第5条 乙は甲に対し、本件借地権設定に当たり標記権利金を支払うものとする。 
  2、前項の権利金は、返還しないものとする。
 
(保証金)
第6条 乙は甲に対し、本件借地権設定にかかる自己の債務履行を担保するため標記保証金を預託するものとする。
  2、賃料の増額改定またはその経済事情の変動等により、前項の保証金が担保として合理性を欠く不相当な金額となった場合は、甲は乙に対して保証金の追加払いを請求することができるものとする。
  3、第1項および前項の保証金は甲が無利息で保管し、本契約終了の際に本件土地の明け渡し返還を受け、かつ第15条第3項の規定により本件借地権設定登記が抹消されたときは、甲は直に乙に返還するものとする。
 ただし、甲は乙に対し既に履行期の到来した地代債権などがある場合、いつでも対等額で相殺できる。
  4、乙は、保証金にかかる返還請求権を第三者に譲渡し、または保証金を他の債務の担保に供してはならない。
 
(事前承諾事項)
第7条 乙は次の各号の一に該当する行為をしようとするときは、あらかじめ甲の書面による承諾を得なければならない。
(1) 第2項に定める建物につき、竣工前に設計変更をしようとするとき、竣工以後増改築または再築をしようとするとき、もしくは用途の変更をしようとするとき、法規上の規制等により変更が必要になったとき
(2) 本件借地権を譲渡しまたは本件土地を転貸しようとするとき
(3) 本件土地の区画形質を変更しようとするとき
(4) 本件土地上の建物を賃貸しようとするとき
 
(契約の解除)
第8条 甲は乙が次の各号の一に該当するときは何らの催告なしに本契約を解除することができる。
(1)第2条に違反したとき
(2)第4条の賃料の支払いを3カ月分以上怠ったとき
(3)前条に違反し、通知を行うことなく、建物を増改築したとき
(4)前条に違反し、本件借地権の譲渡・転貸をしたとき
(5)前条に違反し、本件土地上の建物を賃貸したとき
(6)乙又は乙の代表者及あるいは役員または使用人が特定の平穏を害する政   治主張をする団体若しくは暴力団の団体に属すると判明したとき
(7)営業内容、信用状態等、重要な事項に関し、借地権者の事前の説明に虚   偽があったとき
(8)その他借地権者に本件借地契約を継続しがたい重要な背信行為があった   とき
 
(乙からの解約権の留保)
第9条 本契約期間中に乙の責めに帰すべからざる事情(例えば地震・火災等)により本件建物が滅失したときは、乙は甲に対して、3カ月以上の予告期限をおいた上、本契約の解約を申し入れすることができる。
 2、前項の場合において、本契約は解約の申し入れがあった日から3カ月を経過することにより消滅する。
 
(契約の失効)
第10条 天災地変、公用徴収 その他行政処分により、本件土地が使用できなくなったり、使用が制限され、または収用され、本契約を継続することが困難となったときは、本契約は失効するものとする。
 2、前項の場合には、甲乙相互に損害賠償の請求をしない。
 
(本件土地上の建物の賃貸借)
第11条  乙が、本件土地上の建物を賃貸しようとするときには、次の各号を遵守しなければならない。
(1)契約は法39条に定める取り壊し予定の建物の賃貸借の契約によること(2)契約期間は、本契約終了の3カ月前に終了させること
(3)建物賃借人に対して、本契約終了の1年6カ月前に建物が取り壊される   旨の通知をすること
(4)建物賃借人に審査等を行い、反社会的集団(暴力団、暴走族、過激な政   治活動団体など)およびその構成員の排除に努めること
 
(遵守事項)
第12条 乙は本件土地利用にあたり、土地の保守および防災について十分配慮のうえ設計施工するものとし工事完了後は隣接地および周辺に損害迷惑等及ぼすことのないよう善良な管理者の注意をもって本件土地を使用しなければならない。
 
(明渡し返還義務等)
第13条 本件土地の存続期間が満了した場合、第9条第1項の解約の申出が受理された場合、または第8条により本契約が解除された場合は、乙は甲に対し、本件土地上に存する建物その他の工作物を自己の費用にて収去し、整地し、完全な更地として返還しなければならない。
  2、乙の明け渡しの際の本件土地上の残留物に関しては。乙はその所有権を放棄したものとみなす。
  3、本件借地権が存続期間の満了により消滅する場合において、乙は甲に対し、期間満了1年前までに建物の取り壊し及び建物賃借人の明渡し等本件土地の明渡しに必要な事項を書面により報告しなければならない。
  4、乙は、明渡し返還に際し、移転料、立退料等の名目の如何を問わず甲に対し一切の金品の請求をすることはできない。
  5、本契約終了と同時に乙が本件土地を明渡し返還しないときには、乙は本契約終了の翌日から明渡し返還完了にいたるまで、直近賃料の2倍相当額の遅延損害金を支払うものとする。
 
(費用償還請求権等の放棄)
第14条 乙は本件土地の使用に必要な一切の費用、経費を負担するものとし、また、本契約終了時の本件土地の明渡し返還にあたり有益費用の償還請求権を行使せず、甲に対して名目の如何にかかわらず何ら補償の請求をすることができない。
 
(登記)
第15条 本契約を締結した後、甲及び乙は、速やかに本件土地について下記の賃借権の登記を設定する。
一、原  因     平成  年  月  日設定  
一、目  的     建物所有
一、借  賃     1月金   円
一、支払期       翌月分   毎月25日
一、存続期間        年間
一、特約       借地借家法第22条の特約
一、賃借権者     乙
 2、登記の費用は甲・乙折半にて負担する。
 3、乙は本契約終了と同時に、自らの責任において第1項の本件借地権設定の登記を抹消しなければならない。ただしこの抹消登記にかかる費用は甲乙の折半とする。
 4、乙は本契約終了と同時に、自己の負担において速やかに本件建物に付着した担保権の抹消登記及び建物滅失登記をしなければならない。
 
(管轄裁判所)
第16条 本契約に関する紛争のうち法第41条に規定する以外の紛争については甲の居住地の地方裁判所を第一審の管轄裁判所とする。ただし甲が本件土地の全部又は一部を処分し、又は甲に相続が発生し賃貸人が複数存在するに至ったときは本件土地の所在地を管轄する地方裁判所を第一審の管轄裁判所とする。
 
(協議事項)
第17条 本契約に定めがない事項、または本契約条項に解釈上の疑義が生じた事項については、甲及び乙が民法その他関連法令及び不動産取引の慣行に従い、誠意をもって協議し、解決するものとする。
 
(特約条項)
第18条                                                                                                                                               
 
(連帯保証人)
第19条 連帯保証人(以下丙という)は、賃料の支払い等本契約に基づく乙の一切の債務について保証し、乙と連帯して履行の責めを負うものとする。
 
(媒介業者の報酬) 
第20条 甲及び乙が、本件取引を媒介した宅地建物取引業者に支払うべき報酬の額は当該業者と締結した別紙媒介契約書所定の金額(建設大臣の定めた報酬額)とし、同契約書に既定する支払い方法によって各々がその負担分を支払うものとする。
          平成  年  月  日
 
       甲 住  所
 
  氏  名
       昭和    年    月     日
 
乙 住 所
 
  氏 名
 
       昭和    年    月     日
 
丙 住  所
  氏  名
                                  昭和    年    月     日
一般定期借地権設定契約の
               チェックポイント
 
第1条 規定の不適用~契約の更新、建物の築造による存続期間の延長がない、建物の買取請求権がない旨を明記します。また、法4条ないし8条、13条及び18条、並びに民法619条の適用がない旨、念のため明記します。なお、民法619条(黙示の更新の規定)については、契約書に適用の排除を特約で定めない場合、適用がある、つまり借地期間満了後の借地人による使用継続による契約の更新がある、と解する有力説があります。したがって、黙示の契約更新を阻み、土地の返還を確実にするために必ず民法619条を適用排除しておきます。
 
第2条 建物の用途・種類等についての定め〜標記において、建築予定建物の種類・構造・規模・用途を掲げ、本条第2項で、それらの事項に反する建物を建てることを禁止しています。これはいわゆる“用途制限に関する特約”ですが、この特約を設定しない場合、当初から用途の変更について承諾を与えているとみなされる可能性が高いので、必ず定めておきます。なお、この特約がある場合、借地人が契約途中において用途等について変更を希望しても地主が承諾しない場合は、借地借家法第17条の規定により借地条件の変更について裁判所に許可を求めることができます。第3項においては、借地人の善管保存義務を明記しました。このような規定は、法律上の当然の義務を明記しただけのもので、特に契約書に定める必要はありませんが、借地人の土地についての保存・管理についての自覚を促すという点で意味があるといえます。
 
第3条 借地期間〜50年以上の期間(西暦を併用したほうが無難)を定めます。50年以下の期間を定めた場合、期間30年の普通借地権となる危険性があることに注意して下さい。
 
第4条 賃料〜金額、支払方法、支払期限を明記します。毎月25日までに翌月分を借地権設定者指定の銀行預金口座に振込むというのが一般的な方法です。支払い時期についての定めがない場合は、後払いとなります。銀行振込の場合は、過去の判例によると支払方法としては持参債務になりますので、地主が賃料増額請求をしても、借地人が賃料の増額に応じず、従前の賃料を引き続き振り込み続けた場合は、受領拒絶の意思を明確にするため、送金された金額をそのまま返送するか、あるいは、賃料の一部として受領する旨を借地人に通知する必要があります。
賃料増減請求権〜借地借家法11条第1項の規定をそのまま定めたような契約書(例えば、賃料が本件土地に関する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の賃料等に比して不相当となったときは、地主または借地人は賃料の増減請求することができるものとする、というような条項)もよくみかけます。法律の規定があるのだから、借地契約においてこれと同様な条項を盛り込む必要はないのではないかとも考えられますが、賃料増額は地主にとっても借地人にとっても重大な事柄なので、法律上の請求権を再認識するためにもあえて条項として定める意味はあります。これは、普通借地権だけではなく、一般定期借地権についても同じことがいえます。
賃料自動改定特約〜賃料自動改定特約については、特約に定められた増額の要件、増額の幅等によって違いますが、その内容が合理的であれば有効です。この特約は、単に法律上の賃料増減請求権を契約内容に定める以上に、増額のたために必要な手間・費用を節約することができ、余分な紛争を未然に防ぐために意味があります。当事者に、予めどの程度の増額となるのか予想できるという点が合理的であるといえます。本契約書においては、GNPの成長率に応じて、と定めましたが、外にも例えば“賃料は××年毎に改定することとし、その改定時において改定時の賃料の○○パーセントを増額する”あるいは“賃料は固定資産税の××倍とし、固定資産税が増額された場合は、その割合に応じて増額する”というような自動改定特約が考えられます。増額割合については、経済事情を著しく上回る割合にすることは増額の特約を無効にすることになりますので、あまり極端なパーセントや倍率を使うことは危険です。
公租公課の負担について〜本契約書では固定資産税を借地人の負担とし、固定資産税額を月割計算で賃料と一括して振り込むものとしました。この方法により、地主にとっては収益の見込みがよりたてやすくなるといえます。
 
第5条 権利金〜権利金の授受がある場合は明記します。権利金の性質については必ずしも明らかではないので、返還しない場合はその旨も明記します。
 
第6条 保証金〜保証金は、主に借地人の地代支払い債務を担保し、そして借地期間満了時に借地人が建物取り壊しを任意に行わない場合の建物取壊費用を担保するために支払われるものです。保証金については、その交付の趣旨が必ずしも明らかではないこともあって返還の要件、返還の時期等について契約内容で定めておく必要があります。本契約書の場合、無利息で返還すること、そして土地の明渡し及び一般定期借地権設定登記抹消を促すため、その登記の抹消、建物に付着した担保権の抹消登記、及び建物滅失登記が完了してから返還することを定めました。
 
第7条 事前承諾事項
(1)無断増改築禁止特約〜判例上有効とされています。無断増改築禁止特約という形式ではなく、増改築の際の通知義務を特約として定めるという考え方もあります。用途の変更についても承諾事項としました。
(2)無断譲渡・転貸禁止特約〜これは、賃借人は賃貸人の承諾なしに賃借権の譲渡、転貸できないという民法上の規定を単に明記するものです。(民法612条)借地権が地上権の場合は、その性質が物権であることから、譲渡は自由にできます。実際には従来の借地契約のほとんどは賃借権ですし、一般定期借地権についても地上権で設定されることはあまりないと予想されます。 したがって、特にこの特約を定めなくても地主の承諾無しに、譲渡・転貸はできず無断で譲渡・転貸した場合には、借地契約の解除原因となり得ます。地主の承諾が得られない場合は、裁判所に賃借権の譲渡・転貸について許可の申し立てを行う必要があります。   
(3)土地の区画形質について変更を加えるとき〜借地人にはその土地を返還するまで善良な管理者の注意をもってその物を保存する義務がありますし、また、契約やその土地の性質によって定まった用法に従い使用・収益をする必要がありますので、土地を一部を地主の承諾を得ずに掘り起こしたり、また盛土をしたりするような行為は善管保存義務違反あるいは用途違反にあたり、契約解除の原因となり得ます。 本契約書のように賃貸人の承諾について書面を要求することは、承諾の有無に関する紛争を未然に防止するために合理的な特約であるといえましょう。
 
第8条 契約の解除〜借地契約の解除原因と解除の要件について規定するものです。民法上の規定では借地人に債務不履行があった場合は、催告をなしそれにもかかわらず債務を履行しないときに、地主は契約解除することができることになっています。解除原因になる債務不履行は、賃料不払い、土地の用途義務違反、土地の善良な管理者としての保管義務違反、無断譲渡転貸等があげられます。そのほか、本契約書のように特約として無断増改築、無断建物賃貸借、暴力団関係者であることの判明、虚偽の事前説明なども解除原因として定めることは可能です。本契約書は、無催告解除特約を定めましたが、このように契約書に定めているような場合でも、実際には信頼関係違反が問題となるので、催告をしてから解除の意思表示を行うのが普通の方法です。例えば、借地人が3カ月賃料の不払いをした場合、いきなり解除通知を出すのではなく、“○○日以内に3カ月分の賃料を支払わないときは、契約を解除する”というような内容の内容証明郵便を出し、それでも賃料を支払わない場合に契約を解除でき、任意に明け渡しを履行しない場合は、明け渡し訴訟を提起することになります。
 
第9条 借地人からの解約権の留保〜賃貸人からの期間内解約権の留保の条項を契約書に盛り込むことは、借地人に不利な特約として借地借家法に反し無効です。最近では借地人からの賃貸期間中における解約権の行使が問題になっています。火災等借地人の責に帰すべからざる事情により建物が滅失したような場合、再築するにも残存期間が短く、借地権設定者が解約にも応じないとなれば、残存期間、借地料を支払い続けないといけない訳で借地人に過度な負担をかけることになることになります。このような場合、借地人の解約権を留保する(借地人から解約する権利を認める)ことは一考に値します。本契約書においては、3カ月の予告期間をおいて解約できめる旨を定めました。
 借地権者が自力で建物を取り壊したような場合にまで、解約権を認めるのはどうでしょうか。借地権設定者の賃料収入の期待権を害することになるのでは、という考え方もあるようですが、本契約書では借地人が保証金の返還請求権を全額放棄することによって解約権を認めました。
 
第10条 契約の失効〜契約が失効する要因を列記しました。天変地異や公用徴収の場合はやむおえないでしょう。特に土地収用法にかかるる場合は、地主・借地人の意思とは無関係に公共の利益と増進のために、定められた手続きにしたがい、土地は収用されることになり、契約は当然に失効することになっています。
 
第11条 本件土地上の建物賃貸借〜借地期間満了時に建物賃借人がいた場合に、スムーズな明け渡しを実行させるための規定です。詳細については本文《建物賃借人の扱い》参照。
 
第12条 遵守事項〜善良な管理者の注意をもって目的物を保存し、使用するべきという民法上の規定をそのまま定めました。この特約が無くても借地人にとって当然の義務ですが、契約書の条項に盛り込むことによって借地人の注意を喚起することになります。法文上、当然の義務であっても必ずしも借地人がその義務の内容を知っているとは限らないので条項に定める意味はありそうです。
 
第13条 明渡し返還義務等〜建物を取り壊しの原状回復義務等を定めました。一般定期借地権である以上借地期間満了時に借地人からの建物買取請求権はありませんので、賃借物である本件土地を元の状態(更地)に戻して返還する義務があります。これを原状回復義務とよんでいます。本条では、その原状回復義務を明文化し、そしてそれを借地人の費用負担と定めました。
建物譲渡の特約について〜建物の取り壊しは経済的な観点からも無駄であるとして、契約終了時に建物を無償譲渡する旨の特約を定める、あるいは地主が金銭を支払って建物を買うという建物の売渡請求権を契約書に定めては、というアイデアもあるようですが、更地で土地を返還するという事業用借地権の立法趣旨に反するのではないかという考え方もあり、その場合、契約全体として無効となり、普通借地権に転換してしまう危険性がない訳ではありません。判例の集積を待つほかありませんが、今の時点では、契約の当初に建物の無償譲渡の特約、あるいは、建物の売り渡し請求権の特約を定めるのは見送った方が無難であるといえます。ただし、契約成立後、しばらくした時点で無償譲渡の契約をする場合は有効であるとの見解もありますので、地主、借地人双方の経済的利益を考えると、契約終了間際での建物譲渡の交渉は十分に可能でしょう。特に一般定期借地権の場合は、契約当初において建物譲渡特約を定めると、借地借家法23条に定める建物譲渡特約付借地権との区別が困難となり、法定借家権が発生し、借地期間満了時の利害調整が非常に困難になる危険性が高くなることに注意が必要です。
残留物の所有権の放棄〜借地人が借地期間期間満了後、借地上に物を残している場合の対処方法を定めました。借地人が借地上の自己所有物を残して退去した場合、地主に当然に残留物に対する処分権限が発生する訳ではありません。いわゆる自力救済は認められていないのです。地主が催告しても借地人が残留物を引き取らない場合は、訴訟により債務名義を得て建物の取り壊しあるいは残留物を差押・換価する必要があります。ただ、借地人にスムーズな明け渡しを促すため、特約としてこのような残留物の所有権の放棄についての条項を定めておくのも一つの方法といえますが、その有効性には疑問があります。
借地人の報告義務〜契約期間終了一年前に借地人に明け渡しに必要な一定の事項について書面による報告を義務づける旨を定めました。これは、特に借地上建物に建物賃借人がいるような場合に明け渡しをスムーズにするために有効であるといえるでしょう。
立退料について〜一般定期借地権については、理論的に立退料の発生はないはずですが、モラルを定めた確認条項としては契約書に明文化する意味があります。逆に、立退料の支払いについて特約で認めると、一般定期借地権の趣旨を否定し、普通借地権とみなされる一要素となる危険性があります。
明け渡し遅延の場合の違約金〜本契約書では、賃料の2倍相当額の違約金を定めました。賃料と同額では明渡しを促すことにはなりませんし、あまり高額な金額を定めると違約金の定め自体が無効となる可能性があります。
 
第14条 費用償還請求権の放棄〜借地人には自分が負担した必要費・有益費(地主が負担すべき修理費等)を地主に対して請求する権利が民法608条に定められています。これは、民法上の定めなので、本契約書のように特約で排除することができます。
 
第15条 登記〜従来賃借権の登記はあまりされることはありませんでしたが、定期借地権制度ができてからは、賃借権の登記がもつ意味が見直されることになるでしょう。本条ではお互いの登記協力義務を定めました。登記費用の負担〜地主・借地人の折半と定めました。
賃借権抹消登記、建物担保権抹消登記、及び建物滅失登記〜借地契約終了時は必ず賃借権の抹消登記、建物に付着した担保権の抹消登記、建物の滅失登記をする必要があります。登記完了後に保証金の返還することを定めることによって、それらの登記を促すようにします。(本契約書第6条参照)
 
第16条 管轄裁判所〜本契約から生ずる紛争についての裁判所の事物管轄、土地管轄を定めるものです。この特約はまず、事物管轄について一般的に地方裁判所に第一審の裁判権を認める点に意義があります。次に、どの地方裁判所が裁判権を持つのかということが土地管轄の問題なのですが、民事訴訟法の規定のよると、賃料支払の紛争については義務履行地、すなわち本契約書の場合は、銀行振り込みですので持参債務となり地主の住所地となり、土地の明渡し等不動産に関する訴訟については不動産所在地にある裁判所が管轄を持つことになります。不動産所在地と地主の住所地が他管轄に属する場合は、住所地の方が便利ですので、本契約書では地主の住所地を土地管轄として定めました。管轄の定めについての合意は、それが法定の管轄裁判所に合意による管轄裁判所を付け加えるものか、それとも合意によって管轄裁判所を限定するものであるか(付加的合意か専属的合意か)を明確にする必要があります。本契約書では「甲の住所地の地裁判だけをを第一審の管轄裁判所とする」とし、この合意が専属的合意であることを明らかにしました。
 
第17条 協議事項〜契約書に定めてある事項以外の問題が起こったときは、関係法令や不動産取引慣行に従って協議解決するという常識的な事柄をあえて条項に入れました。このような条項は借地や借家の契約書によく見られるものですが、法的な拘束力は全くありません。しかし、お互い誠意をもって問題に対処することは大切なのでモラルを認識するために定めました。
 
第19条 連帯保証人〜連帯保証人は借地人と連帯して保証債務を負担します。
 
第20条 仲介業者の報酬〜宅地建物取引主任者が本契約の仲介をした場合の手数料は、建設大臣の定めた報酬額によるものとしました。

トップページへ